アペリティフ(食前酒)とは?飲み会前におすすめのカクテル・おつまみを紹介!

今回はアペリティフをテーマにした記事。

最近では日本においてもジワジワと広まってきている素敵な文化について、おすすめのアペリティフカクテル・洋酒紹介とともに綴っていく。

アペリティフとはフランス流の0次会文化

最近たびたび話題になる「アペリティフ」という言葉はもともとフランス語で、日本語に訳すと「食前酒」のようなものを指す。飲み会・食事会・デートの前、1~2人で楽しむ「0次会」といった立ち位置だ。

フランスだけでなくアメリカ・イギリス・イタリアなど欧米を中心に、アペリティフ文化は広く浸透している。欧米ではメインの食事前に、アペリティフを楽しんでいるのだ。

日本ではまだ浸透していないアペリティフだが、都市部の落ち着いて飲めるバーやパブを中心に、ちょっとしたアペリティフを楽しんでいる人たちもいるようだ。

もし、あなたも興味があるようだったら、ぜひアペリティフにチャレンジしてみてほしい。

【欧米の大切な食文化の一つ】アペリティフの意味・特徴

「アペリティフ」のような文化は欧米だと広く深く根付いている。一体どのような文化なのだろうか?

ここで欧米のアペリティフについて紹介する。

アペリティフの起源って?ヒポクラテスとの関係性

アペリティフの起源は古代ギリシャの医師・ヒポクラテスの療法だとされる。彼は紀元前5世紀、エーゲ海・コス島にて生まれ、医者である父・ヘラクリドスと同じく医学の道に進み、壮年期以降には若い医師への指導などに当たった。

ヒポクラテスはその生涯で以下のようなことを成し遂げたとされる。

  • 風邪にかかりにくくする方法や習慣
  • 健康面における野菜や果物の大切さ
  • ワインの「薬」としての位置づけ
  • ハーブティー・アロマテラピー・クレイパックの考案
  • 薬草を採用した医療法提案

現代では常識とされることばかりだが、病気の治療を祈祷や呪術に頼っていた古代において、ヒポクラテスの試みはまさに目から鱗。その数々の功績をたたえ、後世の医学界で彼は「医学の祖」とも呼ばれるようになった。

とある日、ヒポクラテスは食欲不振の患者に対して、ハーブを活用した苦味のあるワインを処方。そうすると、患者の食欲不振はたちまち快復したらしく、これがきっかけに食欲増進を目的に「アペリティフ」の文化が始まった。

アペリティフはフランス語!愛される「アペロ」の食文化

ヒポクラテスがきっかけに始まった食前酒(ラテン語で「aperitivus」)の文化は、欧米を中心に広まった。その中でもフランスでは「アペリティフ(apéritif、略してアペロ)」として、食文化・習慣として愛されている。

フランスにはそもそも食事を楽しむ習慣があったことも起因して、アペロは夕食をもっとおいしく楽しくするための文化として根付いたとされる。

スパークリングワイン・シェリーワイン・カクテル、そしてちょっとしたおつまみをサクッと楽しみ、仕事からプライベートに気持ちを切り替えているのだそう。

イタリアの国王も愛した「食前酒=アペリティーボ」

食前酒の文化は「アペリティーボ(aperitivo)」としてイタリアでも愛されている。フランスと同様にディナー・ランチ前にお酒とおつまみを楽しむのが一般的。

かつて18世紀のイタリア国王であるヴィットリオ・エマヌエーレⅡ世が、カクテルメイクに役立つベルモット(ワインベースの蒸留酒)を愛したこともあり、イタリアでは古くからアペリティーボの文化が形成された。

ワインやベルモットはもちろんだが、現代ではイタリア名産の「カンパリ」もアペリティーボで愛飲されている。カンパリは苦味のあるリキュールで、食前に嗜むことで食欲増進させるのに役立つのだ。かつて、ヒポクラテスが患者に特製ハーブ・ワインを処方したのと重なる。

英語の「アペタイザー」はいわゆる「前菜」

「アペタイザー(appetizer)」とは英語でメインの食事の前に食べるものを指す。つまり、日本でいうところの前菜にあたる。たまにアペリティフ・アペリティーボなどと同じような立ち位置で語られるが、微妙にニュアンスが違うともいえるだろう。

とはいえ、メインの前に食事やお酒でお腹を開けるという目的は共通しているので、そこまで厳密に分けて考えなくても良いのかもしれない。

ディジェスティフとの違い

「ディジェスティフ(digestif)」とは、日本でいうところの食後酒にあたる。消化を促すために欧米で広まったそうな。アペリティフなどとは食前・食後という嗜むタイミングが違っている。

ディジェスティフには濃い甘口のワイン・シェリー・カクテルなどが好まれる。香り高くアルコール度数が十分なウィスキー・ブランデー・ラムなども最適だろう。

アペリティフを飲むメリット・デメリット

アペリティフにはいくつかのメリット・デメリットがあるためここで紹介しておく。何となくオシャレなアペリティフだが、きちんとデメリットなどをチェックしておいて無理せず楽しむようにしよう。

アペリティフのメリット

アペリティフのメリットとは、ズバリ!「気分をほどよく高められること」だ。本番の飲み会・デートへ、シラフではなく少し気分が高まった状態で参加できるのは魅力といえる。

また、カクテルや洋酒のもつアルコール成分や甘さ・苦味などによって、食欲増進ができるのもメリット。食欲を高めておくことでより美味しく料理を堪能できる。

アペリティフのデメリット

アペリティフのデメリットというか、注意点として挙げられるのが酔いすぎてしまう可能性があることだ。カクテルやワインなどを軽く飲んでいるうちに、気分が良くなってしまいおかわりをしすぎて、食事相手に迷惑をかけてしまうのは注意しなければならない。

特に勝負のデートや仕事関係の会食前、アペリティフによる飲みすぎや遅刻は厳禁だ。くれぐれもほろ酔い気分程度で抑えよう。筆者は恥ずかしながら何度かアペリティフで飲みすぎて失敗したことがある。あなたにはくれぐれも気を付けてほしい。

アペリティフにおすすめなお酒とおつまみ

最後にアペリティフにおすすめのお酒・おつまみを紹介する。お酒・おつまみに共通するのは、鼻や口に長く残りすぎず、比較的にあっさりとした香り・味わい・風味を楽しめるという点だ。

アペリティフではいずれにしても、後の食事に影響が残らないようなものをチョイスするのが定番。あっさりとした味わいや、爽快感や甘酸っぱさが魅力のお酒がおすすめだ。

一方で、濃い甘さや香り・風味が強いものは、デザート感覚で楽しむような食後酒(ディジェスティフ)に向いているだろう。

なお、各アペリティフをいただいたことのあるバー紹介記事のリンクを貼っているので、お店が気になる場合はそちらも要チェック!

スピリッツベースのスタンダードカクテル系アペリティフ

スピリッツとはジン・ラム・ウォッカ・テキーラなどを指し、おおよそだが「スピリッツ≒蒸留酒」と考えておけば大丈夫。バーで親しまれているカクテルの多くは、このスピリッツをベースに作られる。

そういったカクテルの中にはアペリティフとして人気なものがあり、特にマティーニやネグローニなどは欧米を中心に親しまれている。ここでいくつかカクテルを紹介する。

アレンジの数は無数にある、カクテルの王様・マティーニ

マティーニはジンベースのスタンダードカクテルで、巷では“カクテルの王様”と呼ばれる。映画やドラマで度々登場するほど、世界中で愛されている。

最もメジャーな「ドライマティーニ」のほか、甘さ・コク深さを堪能できる「スウィートマティーニ」、日本のバーテンダー・モウリさんが開発した「ハバナマティーニ」などいくつかの種類がある。

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アペリティフとしてはあっさりとした味わいのドライマティーニが好まれており、その後の飲み会・食事会に影響を与えないのが魅力。

一方で、よほどの酒豪か酒慣れしていないと、一杯でもかなり酔ってしまうほどアルコール度数が高いのがデメリットかもしれない。また、カクテルに慣れていない場合は、一口運んだだけでそのドライな口当たりに衝撃を受けてしまうだろう。

アメリカ人並みの酒豪にはおすすめだが、バー初心者・カクテル初心者にはおすすめできないカクテルである。

気分は高貴な淑女・・・カクテルの女王・マンハッタン

世界中で愛されているカクテル・マンハッタンは、その優雅でしっかりとした味わいから高い人気を博しているウィスキーベースのカクテル。王様・マティーニに対して、マンハッタンは“カクテルの女王”と呼ばれており、アレンジの幅も広い。

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派生カクテルとして「ロブロイ」というカクテルがあり、マンハッタンとは使うベースに違いがある。マンハッタンはアメリカンウィスキー、ロブロイはスコッチウィスキーを使う。

マンハッタンは華やかで大人な女性を彷彿とさせるカクテルだが、ロブロイは騎士道精神を重んじる紳士に似合う一杯。女性はアペリティフでマンハッタン、男性はロブロイを味わうのも一興だろう。

マティーニと同様でアルコール度数が強いため、初心者にはあまりおすすめできない。しかし、スイートベルモットの甘さや、ビターズのほろ苦さを堪能してみたい場合は試してみてほしい。

苦味で刺激するアペリティフの定番カクテル・ネグローニ

ジンベースの有名カクテル・ネグローニは、大人でビターな味わいが魅力。カンパリによる苦味とベルモットの甘みを堪能できる。

苦味と強いアルコールによって食欲が増進されることもあり、アペリティフとしても人気の高いカクテルの一つだ。

氷の入ったロックスタイルのカクテルであり、度数は非常に高くしっかりとした味わいなため、ゆっくりと焦らず嗜むのがおすすめだ。カンパリを使用したカクテルとしてカンパリソーダなどがあるが、そちらもアペリティフとして人気が高い。

あっさりとした甘みと可愛らしい見ためがGOOD!ウィスキーサワー

ウィスキーサワーとは、ウィスキーベースの人気ショートカクテル。マティーニなどと比べると知名度は劣るが、バー好き・カクテル好きの間では広く飲まれており、ややツウ好みな一杯だ。

高さのある細長いグラスに注がれ、レモンやオレンジを添えるのが一般的なスタイル。その可愛らしい見た目とあっさりとした甘酸っぱさが魅力で、度数もほどほどで飲みやすい。

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気分をほど良く高めたいアペリティフのカクテルとしては、まさにピッタリなカクテルといえるだろう。特に女性におすすめかもしれない。

ワイン・シャンパン系アペリティフ

ワインやシャンパン(スパークリングワイン)はアペリティフとして人気が高い。特にヨーロッパではシャンパン系のアペリティフが親しまれており、食事会・デートの前によく楽しまれる。スピリッツ系のカクテルよりも、ほとんどの場合で度数が低く、飲みやすいのが特徴といえるだろう。

サッパリと楽しめる大定番!シャンパン

フランスのシャンパーニュ地方で作られるスパークリングワインの一種・シャンパン。その華やかな甘さや少しの酸味は、アペリティフのみならず飲み会・デート・パーティーで大人気だ。

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度数もほどよく飲みやすいため、アペリティフに困ったらシャンパンを楽しむのもアリだと思う。

筆者はシャンパンの場合、写真のように軽い軽食も楽しんだりする。おつまみと一緒に軽く楽しめるのはシャンパンならではの魅力かもしれない。

シャンパン+オレンジジュースのミモザ

シャンパンベース(スパークリングワインベース)のカクテルとして人気が高いミモザは、オレンジジュースと合わせて作るので爽やかな甘さが魅力

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度数がそこまで高くなく、苦味もほぼ感じないため、マティーニやマンハッタンなどよりも飲むハードルは低い。バー初心者・カクテル初心者でも飲みやすいおすすめカクテルだ。

なお、バーでは冬にフレッシュなオレンジを使って、フローズンカクテルにする場合や、派生カクテル・ホワイトミモザなどとしても人気を博している。これらがまた非常においしく、飲み会前の気分を上げるアペリティフとして最適だ。

サッパリと飲めるシャリーワイン・フィノ

シェリーワインとはワインの一種で、製造過程にてブランデーなどのスピリッツ(蒸留酒)を加えてアルコール濃度を高めたもの。アルコール度数が高いため、一般的なワインよりも保存が効くというのも魅力。

シェリーワインの中にはいくつかの種類がある。あっさりとした香りと味わいのフィノ、フィノよりも濃厚さが魅力のオロロソ、ドロッとした舌触りと濃厚な甘みが人気なペドロヒメネスなどが代表的なところ。

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この中でアペリティフとして人気なのがフィノで、ほど良いアルコール感と爽やかな甘みなどを堪能できる。フィノをサクッと飲んで、飲み会・食事会への勢いをつけてはいかがだろう。

ちなみに、オロロソやペドロヒメネスなどは、食後酒・デザートワインのようなスタイルで楽しまれる。また、オロロソを熟成させた樽は、ウィスキーの製造過程にも使われるなど様々な活用方法がある。

キレのある気品高き一杯を堪能あれ、バンブー

シャリーワイン・フィノをベースにしたショートカクテル。優雅な見ためと華やかさのある味・風味を堪能できる一杯だ。

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フィノにドライベルモットやビターズが加わることで、口当たりや味わいが辛口に仕上がる。しつこくないテイストなので、アペリティフカクテルとして非常に優秀といえるだろう。

王様・ドライマティーニのような感覚で嗜めるカクテルだが、度数は若干控えめになっているのでやや飲みやすい。カクテルを飲みなれていない方にも、ショートカクテル入門としておすすめできる。

アペリティフに最適なおつまみは?

アペリティフに向いているおつまみは、代表的なものとしてミックスナッツ・ドライフルーツ、カナッペなどがある。

このほか甘さ控えめな和菓子、ほど良い塩っ気のあるサラミ・生ハムなども向いている。

どれもバーでよくお通しとして出されるだけでなく、自分でも手軽に作れるのが魅力。食事会・デートなど外食前のアペリティフだけでなく、自宅での軽いおつまみとして最適だろう。

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おわりに

今回のテーマはアペリティフについてだった。アペリティフはフランス流の0次会・食前酒の立ち位置で、欧米を中心に親しまれている文化。

日本ではオシャレに敏感な人たちを中心にやられているが、まだまだ浸透しているとはいえない。

あなたもぜひ、今回紹介したお酒を中心に、自分に最適なアペリティフカクテル・洋酒を見つけてみてはいかが?